戸建の駐車場をカフェにした。
予算も少ないので、古い建具を使って、昔のような精神を持って、簡素にまとめる事を心がけた。
既存の壁や床は斜めになっているので、精度を出すのに、大工さんは、苦労した。
駐車場には排水がなかった。これまた設備屋さんが苦労した。
駐車場には、カフェに必要な電力がなかった。これまた電気屋さんも苦労した。
古い建具をかんなで削ったり、調整するのに、木製建具屋さんは、結構楽しそうだった。
そんな事を短期間で終えなければならなかった。
昔日の客という本の著者を父に持つご夫婦に何か想いがあるように感じてはいたが、よくは理解していなかった。
工事が終わる直前に、昔日の客を読んでみた。よく理解できていなかったものが、本を読み進めるうちに溶けてきた。
その事を施主の関口さんに伝えると喜んでくれているようであった。
僕も、それを見てうれしくなった。
「また、何かあったらお願いします。」関口さんは別れ際にそう言ってくれた。
ぺこりと笑顔でお辞儀した。